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   月夜  劉方平

  更深くして 月色人家に半ばし
  北斗は闌干として 南斗は斜めなり
  今屋偏に知る 春気の暖なるを
  虫声新たに透る 緑窗紗りょくそうしゃ

「月夜」陳福興・画(詩与画 唐詩三百首)
窓越しに入る虫の声
春の気配を伝えくる
いつしか月も傾いて
ひとり寂しく夜は更ける


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096   ←前の詩次の詩→

   夜がふけて、月が傾き、人家を半ば照らしている。
   北斗星は耀き、南斗星は斜めに沈む。
   今夜はじめて春の気が暖かになったと気付いた。
   虫の声が緑の窓かけを通して聞こえてきたのだもの。

 白楽天の詩に「緑窓貧家の女 寂寞二十余」〈婚を議す〉という句がある。「緑窓(窗)」は「紅楼」「朱楼」にあらわされる富貴の家とは反対に、“貧しい女性の家”のイメージを持つ。
 前半、月光が傾き、星が沈む情景描写は、春の夜を眠られずに過ごす女の姿を暗示する。後半の艶なる無聊をかこつ舞台装置になっている。閨怨詩の変形で、上品な趣の詩である。

             (石川忠久「漢詩をよむ・冬の詩100選」)