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柳多留と謡曲


 江戸時代において、謡曲は庶民の教養としてかなり根付いていたとみえて、川柳には能とか謡曲に題材を採ったものが数多く見受けられます。ここでは謡曲に関連する川柳を拾ってみたいと思います。
と、ここまではよかったのですが、実際に作業を始めてみて大いに戸惑ってしまいました。手っ取り早く、岩波文庫の「誹風柳多留」あたりをベースとして、謡曲関連の句を拾っていこうとしましたが、悲しいことに当方川柳が判っておらず、ましてや江戸時代の風俗などほとんど無知に近い状態です。ですから川柳から謡曲へと繋がる部分の裏づけを取るのに、とてつもなく時間を要してしまいました(これ、現在進行形です)。
 さて今回の調査で対象とした句は、岩波文庫にある「誹風柳多留(初篇〜24篇)」「誹風柳多留拾遺」「初代川柳選句集」に収録された「さくらの実(桜の実)」「川傍柳」「藐姑柳」「やない筥(柳筥)」「柳籠裏」「玉柳」です。これ以外の句は、他の文献に現れたもののうち面白そうなもののみに留めました。
 句の後につけた符号と漢数字は出典の略号と巻数、英数字は丁数を表わしています。


第1輯
羽衣  織姫と水浴びすればよかったに
第2輯
鉢木  源左衛門情けはひとのためならず
第3輯
海士  身を捨てて浮かぶ瀬もあり志度の浦
第4輯
松風  行平の夢の三年や須磨の浦
第5輯
殺生石  飛ぶ鳥は落とせど鳥羽は落ちぬなり
第6輯
屋島  能登殿の敵は判官苦労なり
第7輯
楊貴妃  蓬莱を捜しあてれば熱田宮
第8輯
頼政  らりにした茶の木通圓茶屋守り
第9輯
 うつほ舟留まる芦屋の里いづこ
第10輯
道成寺  蛇に化する女人なんぼう恐ろしき
第11輯
船弁慶  蟹となり果てはうんかに譬へられ
第12輯
雷電  梅の花挿す生田川飛ぶ筑紫
第13輯
田村  不思議やと断りて射る鈴鹿山



<参考文献>
これらを調べるにあたり、以下の文献を参考にし、また文章等を一部転載させて
いただきました。

 山沢英雄 「誹風柳多留」 岩波文庫
 山沢英雄 「誹風柳多留拾遺」 岩波文庫
 千葉治 「初代川柳選句集」 岩波文庫
 杉本長重・濱田義一郎 「川柳狂歌集」 日本古典文学大系(岩波書店)
 浜田義一郎・森川昭 「川柳・狂歌」 鑑賞日本古典文学(角川書店)
 神田忙人 「江戸川柳を楽しむ」 朝日選書
 阿部達二 「江戸川柳で読む百人一首」 角川選書
 阿部達二 「江戸川柳で読む平家物語」 文春新書
 室山源三郎 「古川柳と謡曲」 三樹書房
 室山源三郎 「江戸川柳と謡曲」 三樹書房
 浜田義一郎 「江戸川柳辞典」 東京堂出版
 西原柳雨 「川柳江戸歌舞伎」 春陽堂
 中村保雄・今駒清則 「カラー能の魅力」 淡交社
 「別冊 太陽 能」 平凡社
 丸岡大二・吉越立雄 「能 鑑賞のために」 保育社
 増田正造 「能のデザイン」 平凡社
 増田正造 「能百番」 平凡社
 中村保雄 「能と能面の世界」 淡交新社
 横道萬里雄・表章 「謡曲集」 日本古典文学大系(岩波書店)
 小出弘志・佐藤健一郎 「謡曲集」 日本古典文学全集(小学館)
 小山弘志 「狂言集」 日本古典文学大系(岩波書店)
 笹野堅 「大倉虎寛本 能狂言」 岩波文庫
 渡辺睦子 「マンガ能百番」 平凡社
 「観世」 檜書店