T.コッドの作品批評
ここがヘンだよ、
【奇想天外SF兵器】
出版データ
- 著者
渓 由葵夫
- イラスト
加藤 直之
- 出版社
新紀元社
- 定価
1,600円(+税)
- 刊行日
2000年1月12日
《総評》
いちおう、あの兵器研究本【奇想天外兵器】シリーズに連なる筈の本。
古今東西のSF作品に登場する奇想天外な兵器を、研究している筈の本。
だが、その実体は…。
ま、これでこの人の兵器研究家人生も終りだ。そう一言で切って捨ててもいい本(実際、この本出版以後、渓氏の新作は登場していない。もっとも出ていないだけで、出す予定は在るかもしれないが…)。
他人の創った作品を貶めるのは勝手だが、完全に間違った情報(それも私ごときの素人にまで判ってしまうような間違い)を元にそれを行うのは、道義的以前の問題だと思う。なんも知らんのに、なに言うとんのや!。と言う事だ。
簡単に分かる程度の情報を間違える渓氏は、本当に調べて書いているか?。これまでのシリーズの内容まで疑わしくなってくる。
もう一つ。笑いを取るためか、妙なところで太字にしたり、崩れた文体になっているのは、少しばかり気になる。
これまでのシリーズにあったが、大阪弁で突っ込むのは別に良いんだけど、共通語訳は邪魔。逆に大阪人を貶めている事になる(少なくとも、首都圏から大阪に移住して今年で21年になる私から言わせるなら)。
イラスト担当の加藤さん、どうも原稿読んでから描いたらしく、著者の無知さに呆れ返っているように想像できる。たぶん『あほらしくやってられっか!』的な心境だったのでは。古くからのSFファンとしてのプライドが許さなかったのだろう。気持ちは、痛いくらいに良く判る。加藤さんに同情。
ちなみに、この本、このたび、第10回トンデモ本大賞を受賞したらしい。とりあえず、渓さん、トンデモ本大賞受賞、まことにおめでとうございます、と書いておこう。
《各論》
とりあえず、この本でネタにされているSF兵器(並びにそれらが登場する作品)へのつっこみの間違いなどを指摘しておく。もっともきりがないので、程々にしておくが…。
USS〔エンタープライズ〕
NCC−1701
(出典作品:【スタートレック】シリーズ)
同書では10頁〜21頁に記事が記載。
いちおう、これは“TOS”──【スタートレック】邦題:【宇宙大作戦】に登場していた初代のことである。
誤記への追求
- 同書013頁>
>計十二隻建造されたコンスティテューション
>級の一隻(ほかの一一隻はついぞ見たことが
>ないが)。
↓
残念ながら、TOSに登場しています。ま、たぶん渓氏が見てなかったんだけのことなんだろうけど…。でも、まるで作中に登場していないかの描写である。
が、【宇宙大作戦】には〔コンスティテューション級〕航宙艦は、私の知る限り7隻画面に登場しています。
【宇宙大作戦】登場の〔コンスティテューション級〕航宙艦
- 〔コンステレーション〕
(第2シーズン【宇宙の巨大怪獣】)
- 〔エクセター〕
(第2シーズン【細菌戦争の果て】)
- 〔エクスキャリバー〕
(第2シーズン【恐怖のコンピューターM5】)
- 〔レキシントン〕
(第2シーズン【恐怖のコンピューターM5】)
- 〔ポチョムキン〕
(第2シーズン【恐怖のコンピューターM5】)
- 〔フッド〕
(第2シーズン【恐怖のコンピューターM5】)
- 〔デファイアント〕
(第3シーズン【異次元空間に入ったカーク船長の危機】)
以上、岸川 靖さんの【スタートレック メカニクス】で調査。
- 同書013〜014頁>
>通常航行時(と、いっても「何が通常航行
>か?」はハッキリしないが)は、いちおう
>インパルス・エンジンによって、
>インパルス・ドライブをしているようだ。
↓
後半は…、ともかく。前半も…。
要するにワープしていないときは、インパルス‐エンジン(インパルス‐ドライブ)で、航行している。ただそれだけのことである。
- 同書014頁>
>なお、乗員はほぼ全員が連邦宇宙軍に所属
>しているが、給料という概念はない。
↓
『連邦宇宙軍』ではなく、惑星連邦宇宙艦隊である。宇宙艦隊は、軍隊では無い。
- 同書014頁>
>これは映画第八作である『ファースト
>コンタクト』において、二三世紀に
>タイムスリップしたピカード船長
↓
ST8【ファーストコンタクト】でピカード艦長がタイムスリップしたのは、2061年──21世紀だ。
なんか、リサーチがいいかげんすぎ…。
- 同書014〜015頁>
>通称エンタープライズA型と
>呼ばれるのは、NCC−1701−A
>で映画版第一作で登場した。
↓
〔エンタープライズA〕NCC−1701Aが登場したのは、映画版4作目。第1作目に登場したのは、TOSと同じ艦を改装したという設定。
- 同書015頁>
>ところで、『スタートレック』にしろ、
>後述の『スターウォーズ』にしても、
>登場する宇宙船の駆動システムは、
>通常空間においてはほとんどが
>「パルス・エンジンを採用」
>している。
↓
インパルスとパルスを混同している。インパルスとは、反動推進である。英和辞典で調べるぐらいして欲しい。
という事で、この後のパルスエンジンに関する説明は全部意味無し──いや、『説明は、無意味だ』か。
- 同書016頁>
前半部。──…………。この人、変質者?。としか思えないような描写在り。少なくとも、良識の在処を疑いたくなる。
- 同書016〜017頁>
>ワープ
↓
STでのワープとそれ以外での作品のワープとの区別が付いていない。ここで説明しているのは、STの物とはちがう、ワームホール突入型のワープ。
- 同書018頁>
>映画版第一作において、スポックが
>バルカン星から載ってきたバルカン・
>シャトルだろう。通称スラグと呼ばれる
>小型宇宙船
↓
〔スラック〕である。バルカン人の哲学者に由来している。間違っても鉄屑では無い。
- 同書018頁>
>で、ワープ・ドライブ・シールドは、
>というと、ちゃんと本星に帰ったらしい。
↓
シャトルモジュールは、〔エンタープライズ〕にスポックを送った後も、〔エンタープライズ〕にドッキングしたままの筈はないのだが…。当たり前だが、分離し、『ワープ‐ドライブ‐シールド』とドッキングし、帰った筈。常識的に見て、エンジンが単体で帰ることは有り得ない。それは、『非論理的』だ。
- 同書018頁>
>フェザー砲、もう一つはフォトン魚雷
↓
…。フェザー…。フェイザーだと思うんだが…。それに光子魚雷で良いと思う。いずれも入手可能なST資料本にある記載で十分であり、わざわざ…。とりあえず、茶化すような意図が感じられる。
- 同書018頁>
>輪廻転生? ん、なモノはなし。
>文字通り「宇宙の塵」となるのだ。
↓
前半部分、輪廻転生云々の描写は、完全に不要──無意味。ま、『輪廻転生の彼方に旅立った』と言う描写がないだけマシか…。在ったら、私の小説のパクリだ。
後半〜次ページにかけての説明も、不要部分が多い。
この人に、ロッデンベリーを『先生、あんたはエラい。』(P019後ろから4行目)と揶揄されるように書かれたくない。
- 同書020頁>
> で、フェザー砲がビーム兵器なら、
>フォトン魚雷は質量弾、ということか?
> じつはコレも解釈がいろいろあって、
>フォトン=光子であるから、光学
>エネルギー兵器という説もある。
↓
光子魚雷は、少なくとも作中の描写はミサイル的兵器(『質量弾』)である。ちゃんと弾体が映ってるし、映画ST2【カーンの逆襲】では、戦死したスポックを葬る際に棺に光子魚雷の弾体を使用している。VOYやその他のシリーズでも同じ描写が在る。つまり渓氏は、STを観ていない?。
- 同書021頁>
>二〇年前の画像処理技術では、単なる
>火の玉だったフォトン魚雷が、
>実は「質量弾だった」という解釈が、
>「シナリオ上はあった」と信じたい。
↓
もしかして、この人、TOSはそれなりに見たけど、考証や研究できるほど深く観てない?。『シナリオ上』も何も、光子魚雷の弾体がはっきり移っているシーンなんか、ザラに在るんだが…。
──以上。
──で、思ったんだが、渓氏、STのどこを観てこの記事書いたのか?。と云うことである。
USS〔エンタープライズ〕──【スタートレック】シリーズに関する記事を書くのなら、せめてそれに関して入手可能な資料を見るぐらいのことはすべきだろう。ぶんか社から出ている【スタートレック オフィシャルデータベース】(パラマウント社公認)だけ読むだけでも、充分書けるんだが…。
スターデストロイヤー
(出典作品:【スターウォーズ】サーガ)
同書では22頁〜23頁に記事が記載。
製作開始: 2001_08/22(Wed) 22:30
最終更新: