脊髄血管障害
脊髄血管障害は脳に比べると、はるかに頻度が少ないものの、診断が難しく、いったん発症すれば重篤な機能障害を残すことが多い疾患群といえる。しかしながら現在ではMRIの発達により診断が容易になってきている。
脊髄動静脈奇形
分類および症候
1、intramedullary AVM(髄内動静脈奇形)
動静脈短絡、nidusが髄内に存在するタイプの脊髄動静脈奇形、流入動脈は通常複数であり、主に前脊髄動脈を介して中心動脈から栄養される。若年者に多くみられ、くも膜下出血あるいは髄内出血にて発症する。
2、perimedullary AVF(脊髄辺縁部動静脈瘻)
流入動脈は後脊髄動脈あるいは前脊髄動脈からの脊髄辺縁(軟膜)への小動脈であり、動静脈短絡は脊髄表面に存在する。しばしば静脈瘤を合併する。3つに細分類されている。
Type T:流入動脈が単一で、動静脈短絡も一箇所であり、小さな脊髄動静脈瘻。
Type U:流入動脈は複数で、動静脈短絡は一箇所あるいは複数であり、中程度の脊髄動静脈瘻。
Type V:流入動脈は複数、動静脈短絡は複数、血流も早く、大きな静脈瘤を伴う。
頸髄レベルでは、くも膜下出血あるいは髄内出血を起こすことが多いが、胸髄あるいは腰髄レベルでは静脈瘤による脊髄への圧迫、静脈圧の亢進による還流障害を呈することが多い。
3、dural AVF(脊髄硬膜動静脈瘻)
動静脈短絡が椎間孔近傍の硬膜表面にあり、流出静脈が硬膜を貫通し、脊髄表面を走行する脊髄動静脈奇形、中高年の男性に多く発症し、静脈圧の上昇により脊髄症状をていする。胸髄、腰髄レベルに多くみられ、進行性の弛緩性対麻痺を呈することが多いが、近年頭蓋頸移行部で出血発症にて発症する症例も報告されている。
Foix−Alajouanine syndrome:慢性進行性に脊髄の萎縮をきたし、脊髄の表面に拡張蛇行した静脈を認める。現在ではdural AVFのterminal stageあるいは血栓化した脊髄動静脈奇形と考えられている。
検査
MRI(magnetic resonance imaing)
脊髄動静脈奇形が疑われた場合に、まず行うべき検査がMRIである。脊髄動静脈奇形でのMRI上最も特徴的所見としてflow voidがあげられる。これは拡張した流入動脈および流出静脈、nidusさらに静脈瘤などの血管構造物が無信号領域としてみられる所見である。
また脊髄情報として脊髄の腫大、偏位、あるいは脊髄静脈の灌流障害によるT2強調画像における高信号領域などがあげられる。さらに陳旧性の出血ではヘモシデリンが低信号領域として認められる。
DSA(digital subtraction angiography)
脊髄動静脈奇形の確定診断として不可欠のものである。脊髄表面の拡張蛇行する静脈がみえたならば、連続撮影を行うが脊髄動静脈奇形のタイプにより撮影法を変更する必要がある。すなわち硬膜動静脈瘻では血流が遅く、秒間2フレームで開始し、後半は秒間1フレームで撮影することが重要であり、動脈相の早期にはときに秒間6フレームで撮影することが重要であり、intramedullary AVMあるいはperimedullary AVFでは早期動脈相が特に重要であり、動脈相の早期にはときに秒間6フレームで撮像しないと関与する流入血管あるいは動静脈短絡の局在がわからないことがある。
CT anagiography
とくにintramedullary AVMかperimedullary AVFか識別が難しい場合、あるいは静脈瘤および流入動脈、流出静脈と脊髄の関係を知りたい場合に行われる。DSA撮影後にカテーテルをwedgeさせたままCT室に移動し、造影剤を注入しながら連続撮影を行う。
治療
治療の目的は、くも膜下出血、髄内出血の予防、そして静脈灌流障害あるいは静脈瘤の圧迫による脊髄症状の改善である。
治療手段として代表的なものは人工塞栓術あるいは観血的手術がある。intramedullary AVM、dural AVFはともに人工塞栓術の適応であるが、前者がPVA(polyvinyl alcohol)顆粒によるpaliativeな治療が主なのに対し、後者ではNBCA(nonbutyl cyanoacrylate)などの液体塞栓子が完全治癒を期待して使用される。
ただし、dural AVFで、塞栓術が不完全に終了した場合あるいは前脊髄動脈が同じレベルから抽出され、塞栓術gが危険と判断された場合には、観血的手術により硬膜内に流入する静脈を遮断する。
これに対し、perimedullary AVFでは動静脈短絡の部位が脊髄表面に存在し、軟膜上の細動脈の側副路があるので観血的治療により動静脈短絡の遮断を行う。ただしhight flowの動静脈瘻に対しては、術前にflow conrolの目的でPVAを主とした塞栓術を施行する。
頸髄レベルで前脊髄動脈が主たる流入血管となっている場合は前方から椎体切除を行い、動静脈短絡の遮断を行うこともあるが、通常は椎弓切除を行い、後方からアプローチし、前脊髄動脈からの流入血管を遮断する場合には歯状靱帯を切断し、脊髄を愛護的に回転させて行う。
人工塞栓術あるいは観血的手術においても脊髄動静脈奇形が完治せず、再発することはありえることでり、長期間の経過観察およびfollow upのDSAは必須である。
海綿状血管腫 cavernous angioma
疫学的事項
比較的まれな髄内腫瘍で髄内出血を起こすことで知られている。Ogilvyらによれば40歳で発症することが多く、女性が69%であり、胸髄(54%)そして頸髄の髄内に多く見られた。
診断
高磁場のMRIは診断上、有用であり血管造影は通常不要である。
症候
腫瘍内の繰り返す出血によるmass effectによる急性発症、あるいは緩徐に慢性に進行する脊髄症状が典型的である。しかしながら特に家族性のものでは無症状の多数の海綿状血管腫がしばしば見つかることがある。この際、海綿状血管腫の自然経過がまだ不明のため、無症状のものについての治療はいまだ議論の多いところである。
治療
脊髄症状が顕在化している患者では顕微鏡下の腫瘍摘出が推奨される。腫瘍はgliosisによって周囲を囲まれているが、慎重な剥離により全摘出は可能である。放射線照射は出血予防としては無効である。